b0203475_2115386.jpg


この半年ずっと楽しみに待っていた映画「キャロル」を観に行きました。

パトリシア・ハイスミスが偽名でしか出版できなかった小説が、色を纏って動き出す。美しい横顔や街や郊外の景色、タクシーの窓の雨粒や舞い散る雪、タバコの煙。トッド・ヘインズ監督の切り取るシーンは細やかで薫りまで映りこちらに伝わるようでした。

1950年代のアメリカ、何不自由なく暮らしているエレガントで美しいキャロルとフォトグラファーに憧れるあどけなさの残るテレーズは出会う。だけど、離婚調停中のキャロルは夫の飾り物の人生ではなく自分自身の人生を見つめている。テレーズはまだ自分の人生が見えず、そのことにも向き合えずにいる。そんな2人が出会って惹かれあい、真に生きようとする物語。
原作では(珍しく原作を読みました)テレーズの視点のみで語られていたけれど、映画では2人が主役になっています。読解力のない私にはキャロルがテレーズを見つめる視線を読み取れなかったけれど、映画では2人の視線がしっとりと重なり合うことで、言葉なんて意味をなさないもののように思える。天から降りてきたようなテレーズが、どう言葉にすればいいのかわからない感情に揺さぶられ、その気持ちにキャロルが応える。だからラストシーン、これから待ち受けることがなんであれ私とあなたなんだという「終わりのはじまり」に嗚咽を我慢して画面を見つめてました。

夫がいて子供がいて、だから妻で母親であるけれど同時に私自身でもある。私は「まるっきりすっかり私」である時間が欲しくて絵を観たり寒いベランダでコート着て珈琲飲んでみたり手芸したり散歩したりして1人の時間を作っている。その中で一番好きな時間が、大きなスクリーンに映し出される映画を観ている時間。馬鹿げてるかもしれないけど私にはとても大切な時間。今日の大切な時間に、この映画に出会えてよかった。
[PR]
# by tatsukobb | 2016-02-17 21:01 | 映画
b0203475_18324773.jpg


公開ほやほやの「オデッセイ」を観に行ってきました。新年3本目。
水も酸素も通信手段もない火星に取り残された(おまけに怪我までしてる)植物学者が地球に帰るまでのサバイバルストーリー。

完全なるひとりぼっち、ひとりぼっち中のひとりぼっち、太平洋ひとりぼっちなんか目じゃないキングオブひとりぼっちという状況で、人は何を思うか、何ができるか。
こんなところで死にたくない!その一念で一つずつ問題をクリアしようとする姿(勿論失敗もする)、マット・デイモンから感じる根幹にある明るさやユーモアのおかげで悲壮ではなく、彼ならなんとかするんだろうと思えてしまう。これがクリスチャン・ベールだったら??ブラッドリー・クーパーだったら?クリス・プラットだったら???ぜーーーーったい生き残れない。重低音が響く中でうずくまってとりあえず3日は泣いてるか、生きて帰っても廃人状態か、全てを投げ出して筋トレするしかないと思う。
でもマット・デイモンなら違う、ゼッタイ。「彼なら生きて帰れる!」って信じられた事がこの映画の大きな勝因な気がする。マット・デイモンをキャスティングした人にトロフィーあげたい。

火星での奮闘と、寝る間を惜しんで対応するNASAの皆さん、そして地球へ向かうかつてのチームメイト。この3つのパートがそれぞれによかった、様々な国にルーツを持つ人たちが円陣を組むような、手に手を携えるような姿に胸が熱くなった。

音楽の使われ方も秀逸だった。趣味の悪い80年代のディスコミュージック(私は大好き!)が人と人を繋ぐ素敵な役割をし笑いを増幅させ和ませ、火星ときたらボウイ流れるでしょう???の予感的中!素晴らしいシーンに使われていました。大泣き、必至。

胸が熱くなって泣いた。そしてまさかというくらい笑った。火星という場所でなくても目の前にある問題を投げ出さないでひとつずつやり遂げようと知恵を絞ることをしようと思う。
帰り道、人は生きるために生きてるんだなぁとシミジミ考えていたら、エンドロールの「I Will Survive」を思い出し、笑いながら帰った。いやぁー楽しかった。
[PR]
# by tatsukobb | 2016-02-10 18:33 | 映画
b0203475_21205785.jpg


新年2本目の映画は、パディントン!!
子供の頃から絵本で親しんだ、と言えたら素敵ですが、あーあの赤い帽子にダッフルコートのぬいぐるみのクマさんね、というのが私のパディントンなのでした、残念。

しかし実写にCGのクマさんが出てくるってどうなの??違和感アリアリちゃう??それにクマさん可愛くできてるんかな?という心配は、予告編を見ただけではるか彼方に吹っ飛んでいきました。リアルにクマでもない、でもモコモコした着ぐるみでもぬいぐるみでもない、おまけに声まで可愛い(吹き替え版はどうだか知りません)、うまい着地点!

兎に角パディントンが可愛い!ベン・ウィショーの声が紳士なクマの声にピッタリくるなんて、奇跡みたいです。小さいクマは話すとこんな声をしてるんだろうな、もうこれからみんなベン・ウィショーが吹き替えてくれればいいとさえ思えます。

ロンドンの街で新しい住まいを探す愛らしい「よそ者(それもクマ)」であるパディントンが、ブラウンさん一家に調和をもたらす。それは新しいものと古いものが共存するロンドンそのもののようでした。移民にも優しいんですよ!皆さんいらっしゃい!と言いたいのかしら???

ロンドンの街並も、ブラウン家のインテリアやファッション、映像や音楽の魅せ方も愛らしい。これは大人も子供も楽しめるお話でした。
[PR]
# by tatsukobb | 2016-01-22 21:21 | 映画
b0203475_12214731.jpg


アラン・リックマンが亡くなりました。声を上げて泣いたのは随分久しぶりだった気がします。
あれからもう一週間がたちました。この間に膵臓癌で亡くなったのだという事もわかりました。そして彼が死を前に遺そうとしたことなどを知って、改めて素晴らしい俳優であったと同時に素晴らしい人だったのだなぁと思いました。そして何より、世界中の人たちから愛されていたという事がわかりました。心に生き続ける、って使い古された言葉が、はじめてしっくりと胸に響いた気がします。

中学生の時に好きになって以来ずっと憧れの人でした。
色々な映画を観て好きになった俳優さんは他にもいます、でも「この人はいつかアラン・リックマンみたいな俳優になるかなぁ」という物差しがいつもありました。でも私が好きなのは「アラン・リックマンみたいな俳優ではなく、アラン・リックマンその人なんだ」とこの一週間ではっきりとわかりました。やっぱり、彼のような人は他にいないんだ、もういないんだと、ただ思うだけで涙が出る一週間でした。

本当に悪役といえるような役は最初だけだった気がします。あとは怯えていたり寂しかったり滑稽だったり、そして愛嬌がありました。面白い役もたくさんあったし、愛を注ぐ人、死してなお思い続ける人、屈しない人、取り憑かれた人、諦めた人、見守る人、歯の天使、青虫など色々な役柄がありました。やわらかくてまろやかな声をして映画の中に閉じ込められています。
怖い顔や厳しい顔をしている役が多かったけど、優しさが滲んでいるように感じたのは、監督した2作に現れているなぁと思います。人を見守る眼差しが、その声みたいに暖かかったから。

20年以上彼の映画を観て彼の発言を読んできたから、自分の死期を見つめ受け入れ、抗うことなく逝ったんだと思う。何の疑いもなくそう思えます。
安らかに眠ってください。そしていつか私の夢の中にジェイミーみたいに甦って背中を押してください。
[PR]
# by tatsukobb | 2016-01-22 12:22 | 映画
しれっと更新。

b0203475_18102642.jpg


さて、1月半ばにしてやっと2016年1本目の映画鑑賞に行ってまいりました、ギレルモ・デル・トロ監督の最新作「クリムゾン・ピーク」。年始一発目、朝9時にオカルト!素晴らしい幕開き!!
ギレルモ・デル・トロ監督の映画は隅々まで行き届き、貫かれている独自の美意識が魅力的です。それはロボットや怪獣、戦時下の少女の心の不思議な世界、幽霊屋敷とカタチは違えど画面のどこをとっても美しくて、そして同時に物悲しい雰囲気をたたえているのが好きなところです。
そして今回は意匠だけでなくキャストがとても美しいのも魅力的!!見逃せないのです。
ゴシック界の貴公子(って映画秘宝に書いてあった)トム・ヒドルストン、いつも血色が悪いが芯の強さで乗り切るミア・ワシコウスカ、どう考えてもおっかないジェシカ・チャスティン!みんな名前がややこしくって、お美しい!

自立心溢れる小説家志望のイーデスは、10歳の時に亡くなった母親の幽霊を見て以来、目には見えない不思議なものに心を寄せるようになる。父親の謎の死をきっかけにイギリスの準貴族トーマスと結婚することになった彼女は、トーマスと彼の姉ルシールと一緒に、冬になると雪の地表に赤粘土が赤く染み出す「クリムゾン・ピーク」と呼ばれる山頂の邸宅で暮らしはじめます。
ある日、イーディスの前に深紅の亡霊が現われ「クリムゾン・ピークに気をつけろ」と警告します。それはかつて亡霊になった母が言ったのと同じ言葉だった。

今回一番の主役は屋根が抜け落ち枯れ葉も雪も舞い込む邸宅、クリムゾン・ピーク。蛇口を捻れば赤土の混じったお湯が出て、朽ちた壁には赤土が染み蛾が蝶を餌にしている。夜になると呻き声がして、床の軋む音や吹き込む風の音と混ざり合う。地位や名誉が渋とく根付いて住む人を押しつぶすような邸宅が人を狂わせる。この物悲しさがたまらなく美しい。

何度か「うは!」とか「ひは!」とか声を出してしまったものの、外国映画の「来るぞ来るぞ来るぞ…!」っていう間は日本人が思っているよりも短いので(前に何かの映画でも思った、なんだったかしら?)ちょっと表紙が外れてるというか…だから想像してたよりは怖くなく、臨月で観て後悔した「パンズ・ラビリンス」みたいな暫く夢に出てきそうな「人のような生きもの」も控えめでした。
今回はそれより何より、結局人間が一番強欲でおぞましく恐ろしいものよのぉ、ということでしょうか。満足満足。
映画を観終わって表に出ると小雨が降っていて深々と寒く、なんだか映画のエンディングと繋がるようでした。これもまた満足満足。

2016年は真面目に映画日記、更新します!
[PR]
# by tatsukobb | 2016-01-13 18:12 | 映画